事例4次世代閉鎖型牛舎(酪農とちぎ農業協同組合所属(有)グリーンハートティーアンドケイ)
●開発経過・目的
- 次世代閉鎖型牛舎開発研究コンソーシアム(代表:宇都宮大学)が開発。
- コンソーシアムが、新たな換気方式を採用した閉鎖型プッシュ&プル横断換気牛舎を中心に、搾乳ロボット等を導入したうえで、省力・精密飼養環境制御、バイオセキュリティ向上、悪臭拡散防止を目指した実証研究を実施した。
●牛舎概要
- 閉鎖型(一般的なのは開放型)
- 軒高は4m程度に抑えている。(開放型は7m程度)
- Push-Pull横断換気方式を採用
側壁の片面に入気ファン、反対側の側壁に排気ファンを設置※グリーンハートの牛舎は研究用のためファンの設置台数が多い。
〔入気ファン〕66台 〔排気ファン〕78台
⇒通常は入気ファン8台、排気ファン64台で十分
【生産現場での諸課題】
- 生産コストの増加
(飼料費・光熱費等) - 暑さ・乳房炎による乳量の低下
- 暑さによる受胎率の低下
- 悪臭による周辺住民からの苦情
- 後継者不足
- 伝染病への感染
- 牛体表面の熱放出(熱負荷軽減)のため、入気側にダンパ及びバッフルを設置し牛舎内の気流速度を空間的に均一で2m/秒以上になるように設定。
※舎内にあるセンサーが牛舎内の温湿度・風速をきめ細かく計測。
〔THI(温湿度指数)制御システム〕 - 牛舎内は、牛床から搾乳ロボットエリアを経由して給餌エリアに行くことが可能。
※搾乳可能でない牛は分離ゲートから給餌エリアを経由し牛床へ戻ることが可能。 - 導入した搾乳ロボットは2BOXタイプ。
30分間のシステム洗浄(1日2回)を除く、1日約23時間稼動し、不定期搾乳を実施。
〔搾乳回数ピークは昼ごろと夜8時ころ〕
●バイオセキュリティ
- カラスやシカなどの野生鳥獣の侵入は構造上、困難である。
- アブ等の吸血昆虫の侵入
→ 〔牛舎外〕 数種類のアブが捕捉(捕捉数は非常に少数)
※アブが多く生息する地域での結果は不明。〔牛舎内〕 捕捉なし - 高性能光触媒空気清浄システムの稼動により、牛舎内の空気中一般細菌数とブドウ球菌数が99%以上低減。また、光触媒で清浄化した空気が牛舎内を循環することにより、牛舎内の温度低下を防ぐため換気が制限される冬季に威力を発揮すると考えられる。
搾乳ロボット
●悪臭拡散抑制
- 開放型牛舎と異なり、閉鎖型牛舎はPush-Pull横断換気方式のため、悪臭は必ず排気ファンを通るのでこの部分でトラップすることができ、舎外への拡散を防ぐことができる。
- 牛舎内のアンモニア等の臭気強度は、夏季は低く冬季が高い。(夏季の方が換気量多)
また、牛舎内の風速が増すほど臭気強度は低下する。
臭気の流れイメージ
【次世代閉鎖型牛舎の実証効果】
- 閉鎖型牛舎内は開放型牛舎よりも温度が低く、牛体への熱負荷が最大30%程度軽減。
- 閉鎖型牛舎の方が牛の呼吸数が少なく(約7回/分)、牛への熱ストレスが低減。
- 搾乳ロボットの効果と相乗して、夏季の実乳量は期待乳量より平均6.2kg/日・頭多い。
- 種付け回数が開放型牛舎に比べ1回少ない。
- 夏季の乳量増加分だけで、初期コストを18年で回収可能。
<グリーンハートの事例>
- 35℃を超える日でも乳量減は見られない。
- 牛床が常に乾いており、乳房炎罹患牛が減少。
●開放型牛舎に比べた閉鎖型牛舎の経済性
≪コスト≫
- 初期投資額が2,300万円高く、減価償却費が年間125万円高い。
≪経済効果≫
・ | 乳量増加に伴う乳代の増加は718万円(7-10月) | …① |
・ | 暑熱対策費が62万円高い。(7-10月電気代増) | …② |
・ | 乳量増加に伴う飼料代の増加が183万円 | …③ |
・ | 受胎率向上効果(種付回数減/飼料費ロス解消)は111万円 | …④ |
計(①-②-③+④) +584万円 |
≪まとめ≫
- 減価償却費より経済効果の方が高いことから、熱ストレス低減による疾病減少等の影響を踏まえ、閉鎖型牛舎は開放型牛舎に比べ有利性があると考えられる。
●課題
- 搾乳ロボットの不具合が生じる。
→ 「①ライナーが牛に蹴られ絡まる」「②ライナーカップが外れる」「③乳頭カメラ汚れで見れなくなる」
①及び②は当該搾乳BOXが停止。③はすべてのBOXが停止。
※従業員の最大の仕事は掃除すること。停止すると機械を操作し解除する必要がある。